私は幼少の頃から大人になりかけるまで、団地に住んでいた。近所の人が全員顔見知りとか、何かとめんどうなこともあったけれど、それなりに楽しかったと思う。例えば運動会、盆踊りと夏祭り、ラジオ体操などなど、学校とは別にあった。ショッピングセンターもあったし、その前の道路には確か露店も出ていた。(途中で法律が変わったとかで、その露店はほんの最初の頃だけだったと思う。)
いわゆるオバサンの集まりである「井戸端会議」は日常茶飯事だった。その間を通り抜けないと、どこへも行かれないようなこともあり、子供心には憂鬱だったのを覚えている。「あら、〇〇ちゃん、どこへ行くの?」とか言われたり。
近所の子供達とは年齢による差は余りなくて、みんなで遊ぶものだった。男の子とも一緒に遊んだこともある。例えば、中心になる人1人がボールを壁に投げている間に、2つの場所を行ったり来たりして、ボールをぶつけられたら、その人はゲームから外されると言うものだったのを覚えている。なんと言う遊びかは忘れてしまったけれど。
それから女の子同士なら、アンダリア編みをした記憶がある。
私が住み始めた頃は、団地は新しい住まい方だったように思う。小学校もドンドン大きくなって、子供たちの声が賑やかだった。こんな風に団地というコミュニティは大きくなると言うことを誰も疑わなかった。それまでは少し遠い駅までバスに乗らないといけないけれど、そのうちに近くに駅が出来る予定だから、交通の便が良くなると言うことをみんなが信じていた。
長い長ーい時が過ぎて、ドイツに来る前に行ってみた。当時とは違って、どこもかしこもシーンとしていた。子供の声も近所の人たちの集まりの声も聞こえない。もちろん子供の遊具もなかった。
ショッピングセンターは、まだ、あったけれど、閉めてしまったお店もあり、当時の賑やかさはなく、とても静かだった。
誰が住んでいるのだろう?
そうそう、結局出来るはずの駅は、その地区を逸れるようにして出来た。新しく出来た駅までは短い距離で行かれるバスがあるから、便利になったといえば、確かにそうなんだけれど….。
たまに日本へ行った時、いわゆる「団地」を見かけることがある。勝手な感想かもしれないけれど、なんだか複雑で切ないような寂しい気持ちになる。